解剖学の知識では踊れない
なんだか難しいタイトルになってしまいました。
近年、バレエの先生方は解剖学を学んでおられる方が多くなりましたね。
体の構造を知ることが大事だからです。
関節の仕組みや骨組み、筋肉の付き方や筋肉の役割、機能など踊る前に体を知らないと
ケガを招いたり上達の妨げになるような指導をしてしまうこともあるのです。
筋肉の付き方や働きを知ることとバレエ的にどう使うかは、なかなかリンクしづらいところです。
運動機能解剖→この筋肉はこのような時に力を発揮する、こうするとストレッチされる、またはこういう方法で鍛えられるなどを学ぶ解剖学。
バレエの解剖学は、アンドゥオールの時の股関節状態や外旋の為の筋肉の働き、バレエのアライメント(姿勢)における脊椎の状態、つま先を伸ばした時の足の状態や構造などなど
バレエの動きをするための関節の状態や正しい筋肉の使い方を学ぶ解剖学です。
私は一応解剖学の知識はあります。それは指導をするために必要な知識だと思っています。
生徒達も解剖学を学ぶ機会があります。それは、構造上無理のある使い方やケガを防ぐために知っておいた方が良い知識だからです。
では、私が実際踊っている時に解剖学的なことを考えながら踊っているか?と聞かれたら、
即答でこう答えます。「解剖学の知識で踊ったことはありません」
解剖図を思い描きながら筋肉の働きを考えて動くことなんて無理・無理。
踊るときは、踊るためのテクニックを意識します。それはわたくしがレッスン中に発する言葉そのものです。
「回転時のアンナバンはまん丸、アンオーは長い丸」とか「回転が終わる寸前までアームスやパッセをキープすること」、「連続回転のピケアンデダンなどは立つだけの足に対して上半身の回転力を落とさないこと」など踊るためのテクニックが大事なのです。
「ここの筋肉を使って!!」が危険な言葉なのです。
筋肉が力を発するときは収縮時です。例えば「内転筋を使ってアンドゥオールして!」とか「お尻をもっと使って!」と言われたらどうしますか?内転筋が硬くなれば使ったことになるのかしら?お尻も硬くして・・・と考えたとたんに踊りにくい体になってしまうのです。
お腹を使おうと腹筋だけを収縮させて前かがみになっている人や背中を指摘されて肩を後ろに引き下げすぎてしまう人、お尻を使おうとがちがちに固めてアンドゥオールできなくなっている人もいますね。
バレエの場合は、脚を開くは横の開脚のことではなく、股関節の中で脚の骨を外向きに回すことを示したり、「内転筋を使う」はアンドゥオールするために内側のももの面を前に見せるようにすること、「お尻を使う」はお尻の下の方を中心に向かって(尻骨の方向に)回している状態をいいます。
解釈を間違えると使おう使おうと力を入れつづけて踊りにくい状態になってしまうんです。
バレエの姿勢はどこかだけの筋肉を単体で使うことはありません。
床についている足裏から頭まででバレエの姿勢をとっている感覚を忘れないでください。
体のいろいろな筋肉は協調してアライメントを構成しているわけです。
内転筋やお尻の筋肉、体幹(お腹や背中)の筋肉も正しいバレエの姿勢をとった時、結果として使われているということです。
知識は知識として学ぶ必要がありますが、踊るのは体です。
体を使っている感覚を感じることやバレエのルールに沿った体の形を作ること、リズムやアクセントを感じて動くことを習得するのがバレエのレッスンです。
生徒にいつも言っている言葉ですが、教師の指示には体で答えを出すように。
頭で考える人は動けなくなっちゃいますよ。
歩くときに右足出して、次に左足出して・・・なんて考えずにさっさと足を運んでいますよね。
踊ることもそのような感じです。
体がどの方向に向いて動くのか、動きの質はどういうものか(進むパなのか、その場で跳んだりするものなのか)、つなぎのパなのか見せるパなのか・・・
そのようなことに頭を使うことは必要です。
机上の知識と踊るときに考えることは別なので、レッスン中はまず先生の指示に体で答えることに集中しましょう。
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