グランワルツは慎重に

バレエで起こるケガについて考えてみましょう。

大きなケガをしてしまった人に聞いてみると、グランワルツでのケガが多く、ケガの度合いも重いです。これはいわゆるアクシデント的なケガです。(グランジュッテやグランパドゥシャ、ジュッテアントルラッセの着地失敗など)

グランワルツは軽やかで華やかでこれをやらないとバレエのレッスンをやった気がしないという方も多いかもしれません。

ですが、やはり難易度も高く筋力も必要です。

ケガをした人の話を聞くと、「今日はいつもより気持ちよく高く飛べた!!」と思った時の着地で膝の靭帯を損傷したり、踊りの途中で足の運びが分からなくなり上げる足でないほうの足でジャンプし不用意に着地してしまったと言うようなことが聞こえてきます。

受講者のレベルは別にして上の2つについて考えてみましょう。

★いつもより高く跳べたのになぜケガをしたのか?

いつもはこのくらいのエネルギーのグリッサードをして床を蹴り、このくらいの高さ(空中にいる時間)で跳んで、このくらいの時間をかけて着地をする・・・なんとなく自分の中のリズムや力の配分があると思うのですが、たまたまグリッサードがコンパクトで加速度が高まりいつもより高く跳べた←ここまでは良いですね。

でも着地するまでの時間は当然いつもよりかかるし、勢いがついた分のエネルギーをしっかり受け止めるためにはそれなりの引き上げと柔軟なプリエが必要なのですが、そこはいつもと同じだとすると、衝撃は如何なるものか・・・

いつもより高く跳んだ時は着地の計算が出来なくなっちゃうのです。

それは脳から筋肉への指令の誤算によるもの。これが大変危険です。

★踊りの途中で足の運びに迷い、上げる足でないほうの足で跳んで不用意に着地してしまった場合は?

時々代講などで違う先生のレッスンを受けた時などにこんな経験はありませんか?

「あれ?いつもの先生はグランジュッテの前はグリッサードから入るのに、今日の先生はシャッセから3つステップを踏んでグランジュッテに入るの?」と言ったように、いつもの行動パターンと違った振り付けを突然やらなければならないようなこと。

頭ではバランセの後は右でシャッセして左・右・左(踏切)と分かっていても、体は癖でいつも通りグリッサードをしたがって足運びが狂ってしまって「あっ??」と思った瞬間反対の足で跳んじゃったと言うように・・

これも脳からの指示がしっかり筋肉に届いていないケースです。

グランワルツは音楽に乗って勢いもつきますから大ケガにつながってしまうのです。

毎回レッスンのたびに順番が変わるので体に振りが馴染まないうちに踊らなければならないのは仕方ないことですが、やはり難易度が高いものであることを認識し、入門・基礎・初級クラスでしっかり動きを学び、つなぎのパを大事に練習してから大きいジャンプに挑戦して頂きたいものです。

特に40歳すぎてからバレエを習う方は、しっかり筋力をつけてから行いましょう。

高いジャンプの衝撃を受け止められないと膝や腰に大きなダメージを与えてしまいます。

まずは大きいパドゥシャ(猫のジャンプのほうです)やアッサンブレのように最後に両足で体重を受け止めるジャンプのほうが安全です。

頭で順番を考えながら動いているうちは振り付けが体に馴染んでいませんから誤作動を起こしやすいので、しっかり振りを体に馴染ませスムーズに動けるようになってから片足着地のジャンプに挑戦されることをお勧めします。

40代以上の方は膝関節症や股関節疾患、腰の疾患を持っていたり、骨粗しょう症などがあるとジャンプの着地で中足骨や脛骨の疲労骨折なども起こしやすくなります。

やはり、グランワルツの華やかなジャンプは相当訓練を積んだ人ができる技なので準備をしっかりしてから練習に入って欲しいと思います。

ケガをするとケガが治ったときにはせっかく作ってきたほかの筋肉も衰えて、バレエに復帰するには倍以上の時間とエネルギーを必要とします。

それは想像以上に過酷なことです。

指導者もやらせる側としてレッスンプログラムをどうするか?をしっかり考える必要があるのだと思います。

若い時にはわからないことですが、40代からは一般的に筋力の低下が著しくなりますので、若い指導者の方もその辺を考慮に入れてシニアの生徒さんほど筋力アップ(ジャンプ・着地のためにどこの筋肉を鍛える必要があるか?)、足指の付け根(MP関節)や足首の柔軟性を出すメニューなど、踊るための条件を整えるレッスンメニューを考えて頂きたいと思います。

バレエをケガなく、長く楽しんで頂くために焦らずコツコツレッスンを積み重ねて行きましょう!!


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