シニアバレエ指導について
「シニア」=高齢者というイメージ。
嫌だわ!と思った皆さん、一般的には60代からをシニアと呼ぶ傾向がありますが、アマチュアスポーツ界では30代からシニアと呼ぶらしいです。
なので大人バレエはシニアバレエになります(私的に)。
海外のバレエ団の引退年齢は30代後半から40代前半です。もちろんこれはプロバレリーナの話ですが・・・。
オリンピックに出場するような競技に比べて現役寿命が長い印象があります。
筋肉の瞬発力や持続力から言って決してバレエは楽な部類に入らないと思いますが、それでも40代前半まではバリバリ踊れるわけです。
さて、バレエと似たような印象の機械体操とか、新体操、ウインタースポーツのフィギュアスケートの選手も比較的引退年齢は若いですよね。それだけ苛酷なんです。
人間の体は残念ながら老化して行きます。これは若干老化を遅らせる努力はできますが全員平等に起こる現象です。
近年は大人リーナ(大人バレリーナ)さんが本当に増えましたね。これは良い傾向です。
海外のバレリーナが引退する年齢(40代前半)を超えてから、初めてバレエを習う方の人口も増えています。
40代前半で現役を降りるバレリーナはなぜその年に引退するのでしょうか?
年齢とともに筋肉が硬くなったり、筋力が自然に落ちて行ったり、関節の可動域が少し狭くなったり、体力的に厳しくなるからだと私は推測しています。
さて、ではその年齢からバレエを始めるには・・・と考えると、若い人と同じレッスンをしてはいけません。
ウォーミングアップもそこそこにレッスンを始めたり、脚を高く上げようとしたり、無理無理アンドゥオールしたり、グランジャンプのような大きなジャンプを跳んでみたり、バレエ歴が浅いのにをトウシューズを履いたり。これはかなり危険です。
長年バレエをやっている人は筋力を維持できていますから同じ年齢でもできるかもしれませんが、それは体の使い方に慣れていて危険性も十分わかっているからなんです。
バレエ経験がなくて40代・50代・60代になってバレエを始める人は、まずバレエができる体づくりをしなくてはいけません。バレエは優雅だからできるはず、と言うイメージはすぐに覆されてしまうはずです。
筋肉や関節・腱の柔軟性、体幹の強さ・脚力・バランス力(平衡感覚など)が備わっていないと踊れるものではないのです。
通常であればバーレッスンをきちんとやれば筋力が付いたりバランスが取れたりすると言われますが、レッスン回数にもよりますし、正しく体が使えているかが鍵となります。
このように書くとマイナスイメージが強いようですが、一方では正しいバレエは体に良いとも言えます。
プリエやルルベでふくらはぎや大腿部の筋力アップ、体幹力強化、姿勢改善、体重移動が上手になる、動きにリズムが感じられるようになる、筋肉や関節の柔軟性がでる、脳から筋肉への伝達能力がアップするなど最強のアンチエイジング効果も得られるのです。
さてここからが指導者側の問題です。
シニア世代の人の体を知ること。現役バリバリの先生方には信じられない光景を目にすることもありますよ。足が開かない(アンドゥオールできない)、グランプリエをしたら立ち上がれない、ジャンプは床から数センチしか上がらない、カンブレは少ししかそれない、回転で顔をつけることができない、肩甲骨の動きが悪いために手が上がらないなどなど・・・。
そこで、シニアバレエプログラムを作らなければなりません。
関節の可動域を広げたり、筋肉の柔軟性を高めたり、体全体の筋力をつけたりなど、バレエをする以前の体の条件を整える作業が重要です。
なにしろ、大人バレエは体の条件を整えることが先決です。
あとは、指示の出し方ですね・・・パッセをする時にお尻を使って!とか股関節を・・・という言葉を発すると途端に生徒の股関節が動かなくなります。そこに意識が集中して力が入ってしまうからです。
逆にお腹に指示を出すと(おへそをピッと押してパッセを上げて)と言うと股関節の力が抜けてしっかりたたんだパッセが出来たり、パッセが高くなったりするのです。
指導者の言葉は生徒の体を操作するリモコンでもあるので、どこに指示を出したらうまく筋肉や関節を動かせるようになるのかを考えて指導しなければいけませんね。
こうなるとバレエってこう言うものだから・・・という押しつけはできなくなってきます。
まずは人の体をどう動かすか、動きやすい条件をどう整えるか?
運動学・力学・解剖学の域です。
バレエは感覚で踊るものですが、人それぞれ感覚が違うから困っちゃうんです。
私が感じられるこの感覚をどう言葉にして伝えるか?言い方を何通りも用意します。
どの言葉がそれぞれの人にヒットするかわからないから・・・
バレエが上達する人は体をうまく動かす能力がある人、これをセンスと言うのかもしれませんが。
確かに感覚も重要なので、指導者は運動学・力学・解剖学+感覚的なことが理解できていた方が良いかもしれません。
ただし生徒には解剖学用語などを使う必要はなく、あくまでも指導するために必要な知識であることを忘れてはいけませんね。
理詰めで動けなくなる人もいるので、生徒には動きを引き出す魔法の言葉をかけることにして、指導者の頭の中で知識を駆使して指導の試行錯誤をするべきだと私は考えています。
ケガなくレッスンを続けて頂く配慮もしながら、多くの人がバレエで健康になってほしいと願います。
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